開講にあたって
2015. 8. 14. 永田和弘
「咬合は重要」と歯科学のどの分野でも言われています。しかし、教育課程の中で、ことさら「咬合」としては教えられていないようです。 ですから卒直後の歯科医師の「咬合」への不安は深刻で、咬合をどのように学べば良いのか、何から始めたら良いのか、誰に聞けば良いのか、どの本を読めば良いのかが分からなくなっています。
聞けば聞くほど、読めば読むほどますます分らなくなっているようです。
10年くらい前から「“咬合”が分からない」という声が切実なものとなってきました。
咬合を理解する王道は「咬合論と咬合器の歴史」から入ることです。
原典をひも解いた歴史から入ることによって、咬合理論の知識のみならず、先人たちがどのように咬合に立ち向かってきたかを知ることができ、それを見て今度は自分たちがどのように咬合に立ち向かわなくてはならないかを知ることができるからです。
申し上げておきます。原典を見るということは、単に懐古趣味を満喫するというだけではありません。先人は驚くほどに臨床を見ています。同じ臨床を眼の前にして、先人とのデッドヒートです。原典による補綴学史は皆さまの臨床を変えるでしょう。
しかし、この道も簡単ではありません。単に、先達が残した文献を与えられても、読めば分かるというものではないからです。文献を手掛かりに、「本当は如何であったか」を探り、先達の発想や情熱に触れてみたいと思います。「咬合論と咬合器の歴史」は広島大学(1985-2008)、東北大学(1990-現在)、大阪大学(2011-現在)で講義をして30年になりますが、年の功の分もある代わりに、独りよがりの分もあろうかと思います。教えていただくのは私の方かもしれません。
さて、本勉強会ですが、講演会形式ではなく自由参加の円卓勉強会という形式で進めたいと思います。随時、質問があれば対応したいと思います。学生ではなく臨床家対象の明日から役立つ実践を中心とした勉強会となります。古典的文献を根拠に据えた勉強会なので、通説と異なる部分が少なくありません。遠慮なくその様な点は指摘したいと思いますので、録音・録画は禁止とさせていただきます。また、文献だけの販売・頒布は行いません。出席者のみの配布となります。
年単位の修学コースは全コース100万円を超えることが多いですが、それでは受講者は極めて限られてしまいます。 本コースはできるだけ費用を抑えて若いドクターに門戸を開きました。基本文献を基にした全18回のコースです。時間は地方からの参加者や集中できる限界を考えて、毎回3時間とします。毎回、確実に何かを身につけて帰っていただくようにします。
多くの方の参加をお待ちしております。
第2期 BGN勉強会 に向けて
BGN勉強会 第一期 は好評の内に終了しました。
「バランスド オクルージョン」や「グループ ファンクション」はどなたもご存知の咬合様式です。しかし、少し掘り下げてみると、その子細は微妙に各人により異なっています。
本を読めば読むほど、人に聞けば聞くほど、訳が分からなくなってきます。
そもそもが、「矢状顆路傾斜度」という明確な事項でさえ、細部を尋ねると思い及ばなかった部分が出てきます。それら補綴学的事項を発見した先人たちはどのように発見し、意義を考えたのでしょうか。そして、それらがどのように今日考えられているのでしょか。
この根本無しに、いくら楼閣を積み重ねても自信が持てず不安に付きまとわれます。
急がば回れの「原典による補綴史入門」で勉強してみませんか。
2016. 9. 19